ガリレイの相対性原理 †何かが「動いている」というとき、それは何に対して動いているか?という基準を示さなければならない。 逆にいえば、何を基準にするかは自由である。 つまり、道路を50km/h走っている車について、道路が静止していると仮定するなら車は50km/h動いているのだし、車が静止しているとみれば道路が50km/h動いている。もしくは、車と道路がお互いに向かい合う方向に25km/hで動いている(合成速度は50km/h)と見ることもでいる。いずれも同じ事象である。 特殊相対性理論 †
特殊相対論では、この理論が適用されるのが、静止系、或いは等速度の座標系 = 慣性系でのみとしている。つまり、加速度の伴なう運動については言及しない。 光速については「一定である」としているが、光速に達する、若しくは超えるものの存在をここでは特に否定していない。問題は、この光の速度の特殊性ゆえ、他の物理理論にこの光速が再三使用され、また、質量を持つものがこれを超えることはないという前提で考えられている点にある。 ちなみに 光速はおよそ 2.99792458× 108 m/s (Wikipedia:光速) で、通常アルファベット c で表記される。 一般相対性理論 †
一般相対性原理というのは、特殊相対論が慣性系だけに限っていたのに対して、一般相対論では全ての座標系についても物理法則は不変である、といっている。一般共変性原理は、座標変換しても物理法則が変わることはないということ。 等価原理は、運動による加速度と、重力加速度は本質的に同じものであり、それによって生じる質量も結局同じものだということ。例えば、無重力空間でロケットが9.8m/s2で加速したときに船内で後方に向かって感じる重量と、地球上で静止している人が下向きに感じる重量(重力加速度 g = 9.8m/s2)は区別することはできない、ということ。 ガリレイ変換 †3つの空間軸をとる座標系(デカルト座標系)を S と定義する。S の 時刻 t における i位置を x, y, z とする。これを (x, y, z, t) と書く。また、S とは別の座標系 S' (x', y', z', t') を定義する。 S' が S に対して x 軸の正の方向に速度 v で移動しているとし、時刻 t = t' = 0 において S と S' の原点は一致しているとする。 その際、S における座標 P(x, y, z) を S' で見た場合の座標 P'(x', y', z') との関係は、
となる。このとき t = t' (時間は同じである前提) ローレンツ変換 †ガリレイ変換は、光速が一定であるということが考慮されていない。それを、光速が一定であることを仮定して修正された座標変換がローレンツ変換。 x, y, z で表される座標系 S の原点から 時刻 t = 0 の時点に光が発射されたとすると、その光は時刻 t において半径 ct (c は光速)の球面上に達している。 球面の半径を r とすると r2 = x2 + y2 + z2 = (ct)2 …(1) 簡単のために x軸方向だけを考えると、y = z = 0 とし x2 = (ct)2 …(2) この座標系 S に対して x軸の正の方向に速度 v で移動する座標系 S' を仮定し、時刻 t = t' = 0 において S と S' の原点は一致するとする。 この S' についても同様に x軸方向だけで考えると、 (x')2 = (ct')2 …(3) これをガリレイ変換で考えると x' = x - vt …(4) この逆変換は x = x' + vt' …(5) ※逆変換 : 左辺と右辺の ' を逆転。速度 v を -v に逆転。 (5) を (2) に代入すると (x' + vt')2 = (ct')2 で、これは (3) と矛盾する。つまり、ガリレイ変換をそのままでは使えない。 ということで、(4)の式を修正。 x' = γ(x - vt) …(6) γという係数をつけてみる。 この逆変換は x = γ(x' + vt') …(7) となる。 光速は一定なので、時刻 t = t' = 0 で x軸の正の方向に出た光の位置は x = ct …(8) (6)(7)(8)(9)から …(10) t および t' について解くと t' = γ(t - vx/c2) …(11) つまり、ローレンツ変換は (6) 及び(11) の式で表される。 逆変換は (7)(12)。 光速が一定とした場合、この座標変換でないと矛盾が発生する。 時間が遅れてみえる? †床から天井まで距離 x の部屋で、床から天井に向かって光を発射したとき、 その光が天井に到達する時間 t は t = x / c その部屋が速度 v で移動するとして、そのときの光の移動距離を x' とすると、天井に到達する時間 t' は t' = x' / c これを部屋の中でみれば、x = x' なので t = t' 。 しかし、部屋の外からはこう見える。 x = AB で x' = AB'。x < x' で t < t' となるようにみえる。 つまり、部屋の外からみたら t' 経過しているようにみえるが、 部屋の中の人はその時点でまだ t (< t') しか経過していないようにみえる。 この関係式を導けば、お互いにどれだけ時間が遅れてみえるかがわかる。 x : x' = t : t' つまり x / x' = t / t' …(1) また、光速 c とすると、光が速度 c で x' 進む間に、部屋は 速度 v で y 進むので、 y : x' = v : c つまり y / x' = v / c …(2) x' と x と y の関係は三平方の定理が成り立つので x2 + y2 = (x')2 これを変形。 (x / x')2 + (y / x')2 = 1 (1)と(2)より (t / t')2 = 1 - (v / c)2 つまり
ここで t' は部屋の外からみたときの時間(観察者の座標系での時間)で、移動速度 v が 光速 c より遅い場合、観察者からは常に相手の時間の進み方は自分より遅れてみえるということ。 光速以上で移動すると? †では v が c と同じ場合は? なので、時間が止まる。 では v が c よりも大きい場合は? 平方根の中身が負になり、時間が虚数になる!? マイケルソン・モーレーの実験 †相対論が提唱される前、空間にはエーテルという物質が満たされていて、光はそのエーテルの中を進むと考えられていた。その“エーテルの風”の速さ測ろうとした実験。結果的にはエーテルの風などというものは観測されず、光の速さが一定である(エーテルはない)ことを示すものとなった。 図のように、S に光源、A に半透明の鏡(光を半分透過し、半分反射する)、B と C に鏡、D に観測器を設置する。ここでは A に達し、そこを透過して B に達し、B で反射して A に達し、A で反射して D に到達するルート(S→A→B→A→D)と、S から発せられた光は A で反射して C に達し、C で反射して A に達し、A を透過して D に到達する、というルート(S→A→C→A→D)の2つを考える。 AB と AC の距離は等しく、これを x とする。 この装置の右から左にエーテルの風が吹いているとする。エーテルの風というのは、エーテルの中を移動すれば発生すると考えられる(空気中を移動すれば空気の風が発生するのと同じ考え方)。なので、装置を左から右へ、つまり、A から B の方向へ移動させる。この速度を v とすると、光の速さは c - v になる。つまり、光が A から B に到達する時間 t は …(1) 逆に B から A への速度は c + v になるので …(2) となり、A → B → A にかかる時間 t1 は …(3) これを絶対座標系(静止して動かない視点)でみた場合、光が A → B を進む間に鏡 B は vt だけ右へ移動する。つまり、この移動にかかる時間 t は …(4) t について解いて …(5) 同様に、B → A を進む間にも鏡 A は vt だけ右へ移動する、ということは距離が x - vt になるということなので、 …(6) t について解いて …(7) なので、結局 A → B → A にかかる時間 t1 は …(8) となり、前の結果(3)と変わらない。(当然) 次に A → C → A のルートを考える。 光が A → C を移動する速度は、鏡 C は右方向に速度 v で移動することを考慮すると となる(下の図)。 これは C → A への移動も同様(AC 間の距離は x で変わらない)なので、この速度で AC 間を往復すると考えると、それにかかる時間 t2 は …(9) これを絶対座標で考えると、C は速度 v で右へ移動していることから、AC 間の距離を t2 を使って書くと
この距離を光速 c で移動するのにかかる時間は t2/2 なので …(10) つまり …(11) となり、(9)と同じになる。 そして、これでわかるように AB 間にかかる時間 t1 と AC 間にかかる時間 t2 が異なるはずだが、実験では t1 と t2 は同じであるという結果が得られている。 上記の計算は、光源が移動することで光速が変化するということが前提になっているが、そもそも光速 c がそれ以上にもそれ以下にもならない(常に一定)と考えれば、AB 間にかかる時間も AC 間にかかる時間も x / c で同じになるということ。(光速度不変の原理) 4次元時空 †空間 x, y, z の時間 t における光の位置は、半径 r = ct の球面上にある。 r2 = x2 + y2 + z2 = (ct)2 移項して (ct)2 - x2 - y2 - z2 = 0 同様に、x', y', z', t' についても (ct')2 - x'2 - y'2 - z'2 = 0 となり、つまり s2 = (ct)2 - x2 - y2 - z2 = (ct')2 - x'2 - y'2 - z'2 = 0 ここで s は4次元時空における距離を表す。(3次元要素に加えて時間 t が入っている) ミンコフスキー空間 †4次元時空における距離を x軸方向についてだけ考える(簡単のため)。 s2 = (ct)2 - x2 s = 0(4次元距離が 0)とすると (ct)2 - x2 = 0 これを、横軸 x、縦軸 ct として描くと、傾き±1の直線になる。 図の破線が光の軌跡。 ここにy軸もとると円錐状になる。 これを光円錐という。 4次元距離 s が正の値をとる部分、つまり破線の上側(円錐の内側)、若しくは下側(円錐の内側)は原点から光が到達可能な領域で、未来、或いは過去となる。その外は x(y) が ct よりも大きいので、光速を超えないと到達できない。この領域では s が虚数となる空間的領域と呼ばれる。 光速以上で移動すると? †4次元時空座標で考えた場合、本来その原点から光の速さで到達できない空間的領域まで到達できることになる。この場合、s2 = (ct)2 - x2 の右辺が負になるので、s は虚数を示すことになる。 参考 † |