自分会議
もし過去へ戻れるタイムマシンがあったら、過去の自分の失敗を正そうとするに違いない。
では、実際にそうなったら‥‥。果たして過去の失敗はそう簡単に消すことが出来るものなのだろうか。
タイムマシンの実験ストーリーの名作。
考察
私たちの人生において、どちらかを選択しなければならない、という分岐点は幾度となく訪れる。人生とは、まさにその選択の連続である、といえる。ときに、ああ、あの選択は失敗だった!と後悔することも間々あることである。そこで、もし過去へ戻れたら、おそらく誰もが自分の失敗を清算しようと考えるに違いない。つまり、過去の失敗をする前の自分にそのことを忠告するのである。そうすれば、その失敗を免れるはずだ。このストーリーは、まさにその状況になった一人の運命の一例といえる。
その後については、展開は見ての通りで説明の必要もないだろう。つまり、そうなったわけだ。流れそのものは非常に分かりやすい。要するに、知らずに持っていた財産である山林を売るか売らないかで揉めているところで、多数決するにあたって子供時分の自分を呼び寄せた。冒頭の子供時分の記憶はこのことだったのだ、と分かる。そして、主人公(学生の主人公)を除く三人がその子に対しそれぞれに説得を試みて大揉めする。それを見ていた主人公が「生きていくのがいやになる」と漏らした瞬間、その子供は窓から飛び降りて、その子の歳で人生が終了したことになった、という流れ。
タイムマシンを手にした者が過去を清算しようとする話でハッピーエンドというストーリーは、あまり見かけない。タイムマシンがあったところで、仮に過去へ戻ってそれをどうにかしようとしても、結局それを好転させることはできない。予め起こる不運が分かっていても、それを意図的に回避しようとすれば、別の厄災で置き換えられる、ということか。ある意味、運命は決まっている、ということなのかもしれない。
収録
- 小学館 ゴールデンコミックス SF短編集1 (絶版)
- 小学館 小学館文庫 異色短編集1
- 小学館 小学館叢書 異色短編集1
- 小学館 藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版1
- 中央公論社 愛蔵版 SF全短篇1 「カンビュセスの籤」 (絶版)
2000年7月現在
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