ドジ田ドジ郎の幸運
普段からとことんついてないドジ田ドジ郎。そんなドジ郎のもとに、運を操作するという妙なロボットがやってきた。ゴンスケサンと名乗る彼のいうには、これまでついてなかった分、これからバカづきの人生にしてくれるというが‥‥。
考察
人生は山あり谷あり、楽あれば苦あり、それを均してみれば、結局平ら。そういうものかもしれない。いつも幸せだと思っていたら、突然不幸に襲われる。その逆も然り。ずっと幸せな人生なんてあるものじゃない。実は、誰かがそうした人の“ツキ”を均しているんじゃないか?それを具体化したのが、この本編に出てくるゴンスケサンなのだろう。主人公のドジ郎はついてない。予想される不幸は全て経験するという勢いでついていない。人のツキを調整するゴンスケサンをもってして「ツイテネエ」といわしめるほど。もしも、人生全体を通して訪れるツキというのが、何人にも平等であるとするなら、ドジ郎のツキというのは、かなりチャージされているはず。それを一気に解放してみたら、さてさてどうなる?ビール瓶が勝手に飛び上がり、栓が抜け、しかも壊れた冷蔵庫でも冷えてくれる。起こる可能性が物理的にゼロでない以上、偶然にそれが起こることはあり得る。実際あったら実に楽しい。
しかし、偶然というのは、意図して起こるものではなく、不意に起こるものだから納得いくというものだろう。もしこんなことが実際にあったら、おそらくそれは夢か幻と疑うのではないか?ありそうもないことが本当にないから、私たちは現実を現実と認識するのかもしれない。
本編では、一人の人間の人生だけでなく、世の中全体のツキ、というか、偶然がトントンになるように調整されているともしている。ドジ郎の壊れた冷蔵庫でビールが冷えれば、余所の冷蔵庫が火を噴いている。誰かが幸せになったそのとき、誰かがどこかで不幸になっているということか。案外そうなのかもしれない。
ゴンスケサンはこう言っている。「無限ノ偶然ハナイノダ。ドッカデ埋メ合ワセガツクモンサ。」 今日の不幸は明日の幸福と思えば良し、明日の幸福は明後日の不幸と覚悟せねばならぬ。しかし、どちらかといえば、不幸の方が圧倒的に多いのが人生、という気もしないでもない。
収録
- 小学館 ゴールデンコミックス SF短編集1 (絶版)
- 小学館 小学館文庫 異色短編集1
- 小学館 小学館叢書 異色短編集1
- 小学館 藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版1
- 中央公論社 愛蔵版 SF全短篇3 「征地球論」 (絶版)
2000年7月現在
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