ドラえもん

不幸な運命を背負う少年のび太の将来を変える為に、未来の国からやってきた猫型ロボットのドラえもん。彼の四次元ポケットから出てくる不思議な道具で、のび太のピンチを次々と救う。のび太とドラ、そしてしずちゃんにジャイアンとスネ夫。おなじみのメンバーで毎回様々な事件を巻き起こす痛快生活ギャグストーリー。

考察

「ドラえもん」を知らない日本人が、今どれだけいるだろうか。その名を聞けば、誰もがあの青いヘンテコな二頭身のロボット(ロボットという認識があるかどうかは疑問だが)を思い浮かべるだろう。ここまでドラが日本人に浸透したのは何故だろうか。

ドラえもんは、藤子F先生自身、子供達の友達として認識して貰いたいと考えていた。「129.3」という数字がある。ドラえもんの身長、体重、胸囲(ちなみに、ドラえもんの誕生日も2112年9月3日。つまり、「211293」)などが全てこの数値に統一されている。実は、これには理由があった。実は、ドラえもん連載開始当時、小学四年生の平均身長が「129.3 cm」だったらしい。子供達に親しみやすいサイズ、ということでドラえもんのサイズがこの数値におさまったという話だ。ドラえもんは、未来の国、22世紀の世界からやってきたネコ型ロボット。少年のび太の不幸な人生を修正するのが当初の使命であったが、最初は何でもポケットから便利な道具を出してのび太の悩みを解決(?)していたドラえもんも、次第にのび太自身の力で努力させようという性格に変わっている。このことで、ドラえもんは教育的な作品であるという印象が一般に根付くことになるが、本来はギャグ漫画であるので、のび太が道具でズルをしようとして結局困ることになる結末を笑うというのが、この作品の楽しみ方である。

この作品は、いわゆるワンパターン、マンネリの内容となっている。つまり、読者は、話の最初を見れば、およそその結末がどうなるか予測できてしまう。そして、思ったとおり(期待通り)の展開で話が進むのだけど、それでも面白いというのは、その流れであってこその作品で、読者も意外性は期待していないからだろうと思う。むしろ、いつもと違う展開になると読者は不安になるのではないか。

いつものように、のび太、しずか、ジャイアン、スネ夫の間から話が始まって、決まってのび太がいじめられて、ドラえもんに泣きついて、ドラえもんはくどくど説教するけど結局しぶしぶ道具を出して、のび太はその道具を使っていじめられた仕返しをして、さらにエスカレートしてイタズラに転じて、最後はそののび太が酷い目にあう。それぞれの役割が回によって入れ替わったりはするが、大体この流れで完結する。それ以外はまずないといって良い。読者はこのおさまり方に、面白さや痛快さと同時に、一種の安心感のようなものを得ているのだろう。

ドラえもんの世界(つまり、のび太の周辺)の生活空間というのは、空き地に土管という風景や、庭に柿の木がある家や、板張りの塀といった、よくよく考えれば今ではあまり見られないものが多い。タイムマシンの出入り口となっているのび太の勉強机も、襖で仕切られた押入れなどという部屋の各箇所をみてもそう。しかし、それが今風な学習机やクローゼットになると、逆に違和感を感じるはずだ。

この世界は、作品が世の中に出た昭和45年当時の時代背景を(多少は現代に合わせた変化はあれど)ほとんどそのままに今まで描かれている。それにあまり違和感を感じないのは、ドラえもんの世界はその形がホームポイントであるからだろう。変化の激しい現実世界には、実は私たちの心の帰る場所がないのではないか。そんなとき、ドラえもんは相変わらず畳の上に座ってお茶をすすりながらドラ焼きを食べているのである。日本人の心が帰る場所がそこにある。子供の共通の友達「ドラえもん」は、すでに日本人の共通の友達となり、世界中にも広がりをみせている。連載開始から20年以上たつ今もなお、みんなにとって身近な存在として親しまれている。


掲載誌一覧

※ 年表を参照。
※ 大長編ドラえもんに関してはこちらを参照。

収録

2000年2月現在


※ 大長編ドラえもんに関してはこちらを参照。

映像


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