ある日‥‥‥

ある映画マニアの4人が、自作の8ミリ映画を持ち寄って映写会をする。それぞれのテーマで独自のストーリーのもとに制作されている。そんな中、現代の我々が置かれている状況を描いたとして一人のマニアが作った映画は、日常生活の風景から、突然映像が消えるという、何の脈絡のないものだった。そして、この作品自体も大ゴマ空白で終わっている。

考察

ストーリーには必ずしも伏線があり、なんらかの裏付けがあるわけではないということがサブテーマ。そして、今、実はいつ核兵器などによってこの世が終わっても不思議はないという危機感をだれも持ち合わせていないというあたりをメインに切り込んだ、斬新で辛口な作品。

作品としては単純だが、その含む意味は深い。最初の3人が作った映画は次々と描写されているが、ここには、3人がいかにも平和の中に浸っているという視点があるように思える。そして、最後の一人が、それらを見ていて「問題意識のかけらも見当たらない」と憤慨する。少々過激なキャラクターであるが、作者の言いたいことはこのキャラクターの言動から率直に汲み取ることが出来る。

世界各国が一瞬にして地球一個を何度も吹っ飛ばせるような核兵器を持ち合わせ、それが今にも発動可能な状態であるにも関わらず、大衆は少々の不安こそあるにしろ、さしたる危機を感じていない異常な状況を批判していると感じられる。杞憂ではなく、厳然として我々の前に立ちはだかる危機であるということが、この作品を通した作者藤子F先生の主張であると考える。

高度情報化社会と化した今や、スパイや有能な技術者、また悪意をもつクラッカーなどの手によって核兵器が爆発することも完全には否定できない。つまり、世界が終わるのに、伏線や、納得のいく説明など一切必要ないわけだ。今この時点で世界がなくなってもなんの不思議もない状態で、作品の中で、あえて改善の見込みを示していないのは、どうすればこの危機的状況から脱せるかということを読者一人一人に問題提起しているように思う。


収録

2001年1月現在

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