一般相対論的宇宙モデル

時空の 3+1 分解

一般相対論の4次元時空は、適当に導入された時間座標一定の面にスライスされた3次元空間 \sum_{}(t) の時系列として捉える。これを、時空の 3+1分解 (正準形式, ADM形式)と呼ぶ。

\sum{}(t) 上の計量が

 d\sigma^2=h_{ij}dx^i     ( i,j=1,2,3 ) ・・・(1)

のとき、4次元時空線素は

 ds^2=-N^2dt^2+h_{ij}(dx^i+N^idt)(dx^i+N^idt) ・・・(2)

と表せる。4次元計量テンソル10個のうち4つは座標によるパラメトリー化の自由度であり、力学的変数は6個になる。(2)は h_{ij}が6個になるように表現したものである。

時空ダイナミクスを与えるアインシュタイン−ヒルベルト(Einstein-Hilbert)の作用積分は、表面積を除いて

 S_G=\frac{1}{{16}{\pi}{G}}\int{N}\sqrt{h}\left[{K^{ij}K_{ij}-K^2+^{(3)}R}\right]d^4x ・・・(3)

と表せる。ここで

 K_{ij}=\nabla_iN_j-\nabla_jN_i-\dot h_ij ・・・(4)

外部曲率と呼ばれ、\sum{}(t) の埋め込みの仕方を与える。

また、^{(3)}R\sum{}(t)内でのスカラ曲率である。例えば、円柱面では^{(2)}R=0, K_{\phi \phi}=\frac{1}{a^2}となり、固有曲率 ^{(2)}R はゼロだが、3次元空間への埋め込み方に曲率がある(K_{\phi \phi}\neq 0 )ことを意味する。それに対して、球面では^{(2)}R=\frac{1}{a^2}となり、固有曲率もゼロではない。

(3)のラグランジアンはラプス(lapse)NN^iの時間微分を含まないので、これら4つの関数はダイナミクスの変数ではないことを意味する。NN^iは座標系の選択に応じて決まるゲージ関数ということになる。

ロバートソン−ウォーカー計量(Robertson-Walker metrics)

宇宙モデルは、一様、等方3次元空間であり、その計量は定曲率空間として次のように表現される。

 d\sigma^2=a^2\left[{\frac{dx^2+dy^2+dz^2}{1+\frac{k}{4}r_1^2}}\right] ・・・(5)
    =a^2\left[{\frac{dr^2}{1-kr^2}+r^2(d\theta^2+\sin^2\theta d\phi^2)}\right] ・・・(6)

ここで r_1^2=(x^2+y^2+z^2), r=\frac{r_1}{1+\frac{kr_1^2}{4}}kは曲率の符号を表し、k=1,0,-1をとる。k=1の場合r=\sin x, k=-1の場合r=\sin hxとして、動径座標xを導入すると(6)は

 d\sigma^2=a^2\left[{dx^2+f^2(x)(d\theta^2+\sin^2\theta\phi^2)}\right] ・・・(7)

と書ける。

k=1f(x)=\sin x, k=0f(x)=x, k=-1f(x)=\sin hxとなる。

h_{hj}=a^2\gamma_{ij}と書けば、定曲率空間の曲率は

 ^{(3)}R_{ijkl}=\frac{k}{a^2}(\gamma_{jl}\gamma_{ik}-\gamma_{jk}\gamma_{il}) ・・・(8)

であり、スカラテンソルは ^{(3)}R=\frac{6k}{a^2} である。

Nx^iに依存しないようにとれば、\sum{}(t) 上の各点での固有時が同一になるので、そのような t宇宙時と呼ぶ。また、測地線方程式で \dot{x_i}=0なら\ddot{x_i}=0となるためにはN_i=0 を取れば良い。N_i=0ととれば、x_i =一定の世界線がテスト粒子の軌跡となり、このような座標系は物質に付随しているので共動座標と呼ぶ。世界時と共動座標を用いて(2)は次のように書ける。

 ds^2=-N^2(t)dt^2+a^2(t)(\gamma_{ij}(x)dx^idx^j) ・・・(9)

\gamma_{ij}に(5)(6)(7)などと表せる定曲率空間の計量をとり、N(t)=1にとった計量(9)をロバートソン−ウォーカー計量(Robertson-Walker metrics)(R-W 計量)という。この計量は対称性と座標系の取り方によって決まるもので、一般相対論のダイナミクスは一切使われていない。

座標(7)でのR-W計量を用いて、動径方向 d\theta=d\phi=0 での光線の伝播は

 ds^2=-dt^2+a^2(t)dx^2=0 ・・・(10)

で表せる。動径座標がxだけ離れた光源と観測者の間にtに発射した光がt_0に受信され、t+\delta t_0に受信されるとすれば、(10)より

 \pm x=\int_t^{t_0}\frac{dt}{a(t)}=\int_{t+\delta t}^{t_0+\delta t_0}\frac{dt}{a(t)} ・・・(11)

ゆえに、\delta t\ll tならば

 \frac{\delta t}{a(t)}=\frac{\delta t_0}{a(t_0)} ・・・(12)

と書ける。

空間ダイナミクスの運動方程式

R-W計量に対して作用積分(3)を書き下せば K_{ij}=-\dot{h}_{ij}=-2a\dot{a}\gamma_{ij}を用いて

 S_{G}=\frac{1}{{16}{G}}\int Na^3\left[{3\frac{1}{a^4}(\frac{a\dot{a}}{N})^2+(\frac{3}{a^2}\frac{\dot{a}a}{N})^2+\frac{6k}{a^2}}\right]d^4x
    =\frac{3{V}}{8{\pi}{G}}\int(kNa-\frac{1}{N}\dot{a}^2a)dt ・・・(13)

ここでVは空間座標について積分した体積。

物質として共動座標に静止した媒質を考えたとき

 S_m=-V\int a^3\rho dt ・・・(14)

全ラグランジアンは

 L=\frac{3}{8{\pi}{G}}\left[{kNa-\frac{1}{N}\dot{a}a}\right]-\rho Na^3 ・・・(15)

運動方程式は オイラー−ラグランジュ(Euler-Lagrange)(E-L)方程式

 \frac{d}{dt}(\frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i})-\frac{\partial L}{\partial q_i}=0 ・・・(16)

より導かれる。q_1=Nに対しては

 \frac{3}{8{\pi}{G}}\left[{ka+\frac{1}{N^2}\dot{a}^2a}\right]-\rho a^3=0 ・・・(17)

というハミルトン(Hamilton)の拘束条件が得られる。ここで N(t)dt\rightarrow dt なる新しい時間座標をとれば、

 (\frac{\dot{a}}{a})^2+\frac{k}{a^2}=\frac{8\pi}{3}G\rho ・・・(a)

このN(t)をとって、q_2=aとして(16)を用いると

 -\frac{3}{8{\pi}{G}}(2\ddot{a}a+\dot{a}^2+k)+3\rho a^2+\frac{d\rho}{da}a^3=0 ・・・(18)

となる。ここで\frac{d\rho}{da}の項は熱力学第1法則を断熱過程に用いた式d(\rho a^3)+Pd(a^3)=0 より

 \frac{d\rho}{da}+\frac{3(\rho+P)}{a}=0 ・・・(19)

であり、これを(18)に代入すると

 2\frac{\ddot{a}}{a}+(\frac{\dot{a}}{a})^2+\frac{k}{a^2}=-8{\pi}{G}{P} ・・・(b)

となる。

(b)に(a)を適用すると

 \frac{\dot{a}}{a}=-\frac{4{\pi}{G}}{3}(\rho+3P) ・・・(c)

(a)の右辺をエネルギー項と呼び、左辺第2項を曲率項と呼ぶ。\rho+3P>0なら原則膨張となる。

物質の典型例として「ダスト」(P_d=0), 「放射」(P_r=\frac{\rho_r}{3}), 「真空」(P_v=-\rho_v)を扱い、(19)より、各々

 \rho_d\propto a^{-3}, \rho_r\propto a^{-4}, \rho_v=一定 ・・・(20)

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