多くの疑問が残るダーウィンの進化説。確かに、現在確認されている化石や、その他の状況証拠から、大筋で突然変異、自然淘汰を繰り返して進化してきたようである。ただ、ダーウィンが「種の起源」を著してからかなりの歳月が経っており、その間、生物学に関連する科学技術も大きく進歩している。それら最新技術、あるいは理論によって、ダーウィンオリジナルの説は少しずつ修正されている。
修正版進化仮説はいくつかあるが、それらの中の一つに「ウィルス進化説」という説がある。その名の通り、生物がウィルスに感染することによって進化する、という考え方。簡単に言えば、生物が「進化」という病気にかかるのだ。病気というのは、生体に悪影響を及ぼすものばかりでなく、時として生体に都合の良いものもあったのだというわけである。そのウィルスは、生命体にその生物が住む環境に適応するようになる遺伝子そのものをプレゼントしているのだという。これを分子生物学では「遺伝子の水平移動」と呼んでいる。
ウィルスというのは、細菌やその他微生物のような「生物」だと考えられがちであるが、生物学的な分類から見るなら生物ではない。生物は、基本的に自らエネルギーを摂取して生命活動をする、また、自らの子孫を残そうとする、という物体。ウィルスはこれらの活動を一切しない。というのは、ウィルスというのは、DNA(遺伝子)そのものだからである。その周りをタンパク質の膜で覆われてはいるものの、それ以上の構造を持っていない。当然、自らエネルギーを摂取することもなく、自ら子孫を残そうともしない。ただ、何らかの生物の体内に侵入して、自分の持つ遺伝子をその体細胞に伝達するだけである。ウィルスは、けなげな遺伝子の運び屋なのだ。その遺伝子が、体にとって有害なものであれば病気になるし、逆に、それが利の方向へ働く可能性もあるわけだ。
つまり、キリンはそのウィルスに感染した為に首が長くなり、サルはウィルスに感染した為に人間になったのだ、という話になる。しかし、そんな好都合なウィルスが一体何処からやってきたのか?ということになるのだが。